相続とは、亡くなった人の財産関係などの法律上の地位を、妻や子供などの相続人が受け継ぐことをいいます。
亡くなった方を「被相続人」、地位を承継するを「相続人」といいます。
被相続人が亡くなった時から、相続人は、下記のような一切の権利義務を承継します。
民法第885条では、「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。」と規定しています。
相続財産に関する費用としては、固定資産税・火災保険料・相続不動産の登記費用等遺産の保存のために必要な費用、修繕費、維持管理のための訴訟費用などがあります。
区分 | 相続人 | 相続分 |
第1順位の相続人 | 配偶者 子 | 2分の1 2分の1 |
第2順位の相続人 | 配偶者 直系尊属(父母など) | 3分の2 3分の1 |
第3順位の相続人 | 配偶者 兄弟姉妹 | 4分の3 4分の1 |
[第1順位の相続人について]
被相続人は、遺言によって、共同相続人の相続分を指定できると民法第902条に規定されております。
被相続人から婚姻、養子縁組のため、若しくは生計の資本として生前贈与や遺贈を受けている場合のその利益のことをいいます。
寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持または形成に特別の貢献した人がいる場合に、その相続人へに貢した分を相続分として与えることによって、不公平にならないように配慮した制度です。
代襲相続とは、相続人である子または兄弟姉妹が、死亡したり、欠格または廃除によって、相続権を失っているときに、その相続人の子が代わって相続することをいいます。
[相続の欠格]
相続人は、遺産分割前でも自己の相続分を、他の相続人又は第三者に自由に譲渡することができます。
共同相続財産を、各相続人へ分配する手続きを、遺産分割 といいます。
一旦、成立した遺産分割協議でも、相続人全員の合意によりやりなおすことはできます(最高裁平成2年9月27日判決)。
相続人間で、遺産の分け方や感情的な面で、遺産分割協議がまとまらないことはよくあります。
相続人は、民法で定める一定の行為をすると、相続を承認したものとみなされてしまいます(民法第921条)。
これを法定単純承認といいます。
具体的には以下の3つの行為が該当します。
①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為などは除きます)
②相続人が自己のために相続開始を知った日から3ヶ月以内に、限定承認又は相続放棄をしなかったとき
③相続人が限定承認や相続放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、自分のために消費し、 相続財産と知りながら財産目録に記載しなかったとき
[法定単純承認事由に該当する事例]
・相続財産の売却
・預貯金を私的に使用
・相続財産から相続債務を弁済した場合
[法定単純承認事由に該当しない事例]
・身分相応の葬式費用の支出
・財産的価値のない衣類などの処分
・相続財産の無償貸付け
・経済的に重要性を欠くわずかな形見分け
限定承認とは、相続人が相続財産の限度でのみ、被相続人の債務と遺贈を弁済することを留保して相続を承認することをいいます(民法第922条)。
相続財産を調査してみないと、プラスの財産と借金などのマイナスの財産のどちらが多いのかが分からない場合、相続を単純承認してもいいのか不安になりますよね。
そういった場合、相続したプラスの財産の範囲内で、借金などのマイナスの財産を弁済する責任を負うのがこの限定承認です。
相続人が、自己の財産で借金を返済しなくてもよい点が単純承認と異なります。
しかし、限定承認は、共同相続人全員で家庭裁判所に申立てなければならない点や税務上のデメリットなどから実務上あまり利用されておりません。
[税法上のデメリット]
限定承認した場合、財産を時価で相続人に譲渡したとみなして、被相続人に譲渡所得税が課税されます(所得税法第59条)。これを「みなし譲渡所得課税」といいます。
そのため、購入したときより価値が上がっている土地などがある場合、限定承認をすると、被相続人に対して所得税がかかることになります。
なお、相続財産が現金・預貯金のみという場合には、譲渡所得税は課税されません。
亡くなった方に相続人がいるかどうか不明な場合があります。
そういう場合には、利害関係人などの請求によって、相続財産管理人が選任され、相続債権者へ債務を弁済したり、相続財産の分配手続きを行います。
具体的な流れは、下記のとおりです。
なお、相続人がいるかどうか不明な場合には、戸籍上相続人が存在しない場合のみならず、相続人全員が相続放棄した場合、又は相続欠格や推定相続人の廃除によって相続権を剥奪された場合も含みます。
①利害関係人などの請求によって、相続財産管理人を選任する。
↓
②相続財産管理選任の公告(2ヶ月間)
↓
③相続債権者捜索の公告(2ヶ月間)
↓
④相続財産が残った場合は、相続人捜索の公告(6ヶ月間)
↓
⑤相続人が現れない場合は、相続人捜索の公告期間満了の翌日から3か月間、特別縁故者へ財産分与の審判の申立てが可能
↓
⑥家庭裁判所が審判の申立てを相当と認める時は、特別縁故者へ財産帰属。特別縁故者へ財産帰属しない時は、国庫に帰属
※特別縁故者とは、相続人ではありませんが、被相続人と生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者などで、被相続人と特別の関係にあった人のことです。内縁の妻などが該当します。
※相続財産が、共有財産の場合でも、特別縁故者への分与が優先します(最高裁平成元年11月24日判決)。
民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
[遺 贈]
遺贈とは、遺言によって財産を譲渡することをいいます(民法第964条)。
したがって、原則として、被相続人の死亡と同時に効力が発生します。
遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」があります。
また、負担を付ける遺贈もすることがでます
■包括遺贈
財産(マイナス財産含む)の全部または一定の割合を譲渡すること。
具体例:「Aに全財産を遺贈する」とか、「Aに遺産の4分の1を遺贈する」
包括受遺者は、「相続人と同一の権利義務を有する」とされています。
包括受遺者は、相続人と同様に、自己のために相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続の承認又は
放棄の申述を家庭裁判所にしなればなりません。
遺言執行者とは、相続人の代理人として、遺言書に書かれている内容を実現する人のことです。
遺言執行者は、遺言による指定又は利害関係人の申立によって家庭裁判所が選任します。
遺言執行者は、相続財産の管理その他執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
例えば、
遺言書を作成しても、期間が経過すれば、遺言者の意思が変わることもあります。
そういう場合、遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法第1022条)。
また、撤回する権利は、放棄することができません。
なお、下記のような場合、遺言は撤回されたものとみなされます。
①前の遺言と抵触する新たな遺言を作成した場合⇒抵触する部分
②遺言に抵触する生前処分などがされた場合⇒抵触する部分
②遺言に抵触する生前処分などがされた場合⇒抵触する部分
③遺言者が故意に遺言書を破棄した場合⇒破棄した部分
④遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合⇒破棄した部分
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人のために法律上必ず留保されなければならない遺産の一定割合のことをいいます。
したがって、遺留分に反する遺言などは、遺留分を有する相続人の「遺留分減殺請求」によって効力を失います。
逆に言うと、「遺留分減殺請求」がされるまでは、遺留分に反する遺言も有効だということになります(最高裁昭和25年4月28日判決)。
[遺留分]
■相続人が配偶者と直系卑属(子供など)のケース
配偶者 4分の1
子供 4分の1
■相続人が配偶者と直系尊属(父母など)のケース
配偶者 6分の2
父母 6分の1
※兄弟姉妹には、遺留分はありません。
遺留分減殺請求権は、遺留分を有する相続人が、相続の開始及び減殺できる贈与又は遺贈があったことを 知った時から1年間行使しない時は、時効によって消滅します。
また、相続開始の時から10年間を経過したときも行使できなくなります。
遺留分減殺請求は、通常、配達証明付内容証明で行います。
理由としては、遺留分減殺請求を行使期間内に適法に行ったことを証拠として残すためです。
遺留分減殺請求後、遺留分を侵害している相続人が、侵害している財産を返還してくれない場合に
は、家庭裁判所に調停や審判の申立てを行うことになります。
遺留分は、相続開始後、いつでも放棄することができます(民法第1043条)。
相続開始前は、家庭裁判所の許可を得て、放棄することができます。
遺留分放棄の要件は、下記のとおりです。
①放棄が本人の自由な意思にもとづくものであること。
②放棄の理由に合理性と必要性があること。
③代償性があるかどうか(生前に相続分に見合った現金を贈与しているなど)
遺留分を放棄しても、他の相
続人の遺留分は増加しません。
なお、相続放棄は、相続開始前にすることはできません。
相続放棄の流れは、こちら
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