Q 自己のために相続の開始があったことを知った時とは?
Q 被相続人と生前に全く交流がなかった相続人の熟慮期間の繰下げはできるか?
Q 被相続人と同居していた相続人の熟慮期間の起算点は?
Q 相続開始後に債務の存在を知った場合、熟慮期間の繰下げはできるか?
Q 遺産分割後債務の存在が明らかになった場合、熟慮期間の繰下げはできるか?
Q 遺言によって相続しないと信じた場合、熟慮期間の繰下げはできるか?
Q 相続開始後債務が増大した場合、熟慮期間の繰下げはできるか?
Q 相続人が数人いる場合の熟慮期間の進行は?
Q 相続人が相続放棄等をしないで死亡した場合は?
Q 相続人が相続放棄の申述後死亡した場合は?
Q 再転相続人は第1相続と第2の相続について格別に放棄できるか?
Q 未成年者や成年被後見人の場合の熟慮期間は?
Q 親権者が熟慮期間内に死亡した場合の熟慮期間は?
Q 熟慮期間の計算は、初日を算入するのか?
Q 熟慮期間の伸長はどういう場合にできるのか?
Q 熟慮期間中に天災地変などで伸長の申立ができない場合は?
Q 司法書士の過失によって熟慮期間経過した場合は?
Q 相続放棄の受理審判の法的性質は?
Q 相続放棄の申述の取下げはいつまでできるか?
Q 相続放棄受理審判の審査範囲は?
Q 相続の承認・放棄の取消はできるか?
Q 相続放棄の取消の方式は?
Q 家庭裁判所に相続放棄の無効主張できるか?
Q 相続放棄取消の審判の審理対象は?
Q 相続放棄取消の申述受理後の処理は?
Q 相続放棄は詐害行為取消権の対象になるか?
Q 相続放棄について錯誤無効を主張できるか?
Q 法定代理人は、未成年者に代理して相続放棄できるか?
Q 相続放棄者いる場合の他の相続人の相続分は?
Q 相続放棄を債権者に対抗するには登記が必要か?
しかし、相続の放棄等をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信じるについて相当の理由がある場合には、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常認識すべき時(遺産覚知説)となります(最高裁判例昭和59年4月27日判決)。
被相続人と別居後その死亡に至るまで全く交流がなく、死亡後も被相続人の資産や負債について知らされることがなかった場合には、熟慮期間は、債権者からの通知があった時から進行します(広島高裁昭和63年10月28日決定)。
被相続人と同居し、被相続人が経営していた会社の役員に就任している相続人らは、被相続人が積極財産の有していたことを知っていたものと推認されますので、熟慮期間の繰下げはできません((大阪地裁判例昭和意60年4月11日判決)。
一般的には、被相続人の死亡を知った日から進行します。
相続開始時に、積極財産の存在を知っていて、後日、債務の存在を知った場合には、熟慮期間の繰下げはできません(最高裁平成13年10月30日決定、仙台高裁平成4年6月8日決定、高松高裁平成13年1月10日決定)。
遺産分割によって遺産を取得しない旨の合意が成立した後、債務の存在が明らかになった場合でも、熟慮期間の繰下げはできません(最高裁平成14年4月26日決定、静岡家裁平成9年10月20日審判、東京高裁平成14年1月16日決定)。
財産や債務について相続しないと考えていないとしても、被相続人に遺産があることを知ってしたのだから、相続債務がないと信じるについて相当の理由があるとは言えないからです。
遺言によって他の相続人が全て相続し、自分は積極又は消極の財産を全く相続しないと信じた場合、そのように信じたことに相当の理由があるため、熟慮期間の繰下げを認めるべきである(名古屋高裁平成19年6月25日決定、東京高裁平成12年12月7日決定)。という見解が有力です。
遺言によって判明しない債務等が後日判明した場合、相続しなかった相続人は、そのような債務等を把握することは困難であるため、遺言の内容を信じたことに相当の理由があると判断されたようです。
相続開始後、絶縁状態の他の相続人の相続放棄によって、負担する債務が増大した場合には、自己が負担する債務額として具体的数学を確知した時から熟慮期間は起算されます(高松家裁平成元年2月13日審判)。
相続人が数人いる場合、各相続人が自己のために相続が開始したことを覚知した時から熟慮期間は格別に進行します(最高裁判例昭和51年7月1日判決)。
被相続人甲の相続について相続人乙が相続の承認・放棄等をしないで死亡した場合(再転相続)、その相続人丙は、乙の相続開始を知った時から2つの相続の熟慮期間の進行が進行します(民法第916条、法曹界決議明治40年5月18日)。
相続人が相続放棄の申述後、受理審判前に死亡した場合は、家庭裁判所は、再転相続人に手続きを受継させ、その真意を確かめたうえ、申述を受理するか否か決定すべきであるという見解が有力です(法曹界決議昭和45年6月3日)。
しかし、相続人が相続放棄の申述後、受理審判前に死亡した場合には、その審判手続きは当然終了するという見解もあります(静岡家裁浜松支部昭和43年3月13日)。
再転相続人は第1相続と第2の相続について格別に放棄できます。
また、甲の相続につきその法定相続人乙が承認又は放棄をしないで死亡した場合、乙の法定相続人丙は、乙の相続を放棄をしていないときは、甲の相続について放棄をすることができ、その後に乙の相続を放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力が遡及的に無効とはなりません(最高裁判例昭和63年6月21日判決)
[まとめ]
①第1相続を放棄後、第2の相続について承認・放棄可
②第2の相続を放棄後、第1相続について放棄不可
③第2の相続を承認後、第1相続について放棄可
未成年者や成年被後見人の場合には、本人が相続の承認・放棄を判断することができないため、法定代理人が本人のために相続開始があったことを知った時から熟慮期間は進行します(民法第917条)。
参考判例としては、
事実上離婚状態にある妻が自ら引き取った未成年の子が債務を相続しないと考えることは経験則に反するとして、法定代理人が債務の存在を知ったときに、未成年についても熟慮期間は進行すると判示しております(福岡高裁判例昭和62年5月14日判決)。
なお、被保佐人の場合には民法第917条は適用されません。
親権者が熟慮期間内に死亡した場合は、新たに後見人が就任した後 その後見人が相続開始を知った時から熟慮期間は進行します。
熟慮期間の計算は、一般原則に従って初日を算入しません(法曹界決議昭和32年3月7日)。
熟慮期間は、 例外的に、家庭裁判所の審判によって伸長することができます。
期間の伸長は、 3か月の期間だけでは、 相続の承認や放棄の判断をするための相続財産の調査ができない場合に認められます。
具体的には、 以下のようの場合に伸長の申立を行うことになります(大阪高裁昭和50年6月25日決定)。
①相続財産が多額あるいは構成が複雑であって、その内容を調査するのに相当の日数を要する場合
②相続人自身が外国に居住している又は相続財産が外国又は遠隔地に存在する場合
③相続財産の評価の困難性、共同相続人全員の協議期間及び財産目録の調製期間のため相当の日数を要する場合
なお、熟慮期間伸長の申立ては、熟慮期間内に行わなければならず、 期間経過後の申立ては認められませんので注意が必要です。
熟慮期間中に天災地変、その他不可抗力的な事情によって、熟慮期間の伸長の申立ができない場合について、民法上規定はありませんが、熟慮期間経過によって単純承認したものとみなすのは不当ですので、不変期間の追完の場合に準じて、支障となった事情がなくなってから1週間以内に期間の伸長の申立を認めるべきであると解されております(家事審判法7条、非訴訟手続法10条、民事訴訟法97条)。
司法書士の過失によって熟慮期間経過した場合でも、不可抗力によるものとは認められませんので、期間伸長の申立はできません(大阪高裁昭和27年12月13日決定)。
相続放棄の受理審判は、相続放棄の有効無効を確定する裁判ではなく、単に相続放棄の意思表示を受領し、これが相続人の真意に基づくものであることを公証する機能を有するにとどまります(福岡家裁昭和44年11月11日審判)。
相続放棄の申述の取下げは、受理審判がなされるまでは、取下げ(撤回)ができます(法曹会決議昭和35年6月20日)。
相続放棄受理審判の審査範囲は、形式的審査のほか、申述人本人の真意に基づいていることを審査します(最高裁判例昭和29年12月21日判決)
法定単純承認の有無、熟慮期間の経過の有無等の実質的要件は、これを欠いていることが明白な場合に限り却下されることになります(仙台高裁平成元年9月1日決定、仙台高裁平成8年12月4日決定)。
相続の承認・放棄の取消はできません(民法第919条)。
ここでいう「取消」は「撤回」を意味します。
相続の承認・放棄の意思表示が、詐欺・強迫などによってなされた場合には、その意思表示を取消すことができます。
相続放棄の取消の方式は、その旨を家庭裁判所に申述する方法で行います(民法919条2項)。
申述できる期間は、追認することができる時から6ヶ月以内に行わないときは短期時効によって消滅します。
承認・放棄した時から10年経過したときも同様です。
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